▲今も涌き続ける月心寺の「走井」
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やがて江戸時代、街道が発達すると茶店が建ち並び、その名を冠した大津追分「走り井餅」が東海道大名物となります。逢坂の関は京の都の玄関口。清浄な水の湧く走井が旅人のオアシスとなり、人々は走井の甘露でついた「走り井餅」で旅の疲れを癒し、都へ入る装いを整えたといいます。
「走井」は湧き方がとくに勢いよく、あふれて・走る・清水を囲った井戸。そばに建つ「走井茶屋」で休憩をとる旅人たちの風景は、東海道五十三次の浮世絵や東海道名所図会に克明に描かれています。
「走り井餅」の創始は明和元年(1764)。その餅の形は、清冽な水しぶきの一滴一滴を表しています。また両端を尖らせた形は刀鍛冶・宗近が走井の水で鍛えた名刀に似て、この餅を食べれば道中剣難を免れると、旅人たちがこぞって縁起をかついだ餅とも言われております。
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